shinji172011-06-13

「物の孤独について。彼ーある日、自分の部屋で、
私の椅子の上に置かれたタオルを眺めていた。
すると、本当にこんな気がしてきた。
一つ一つの物が独りきりだというばかりでなく、それにはある重みがーあるいは、むしろ、重みの不在がーあり、そのためにこの物は、他の物の上にのしかかることを妨げられている。
タオルは独りきりだった。あまりに独りきりなので、椅子を取り去っても、
タオルは位置を変えないだろうという気がした。
タオルにはそれに固有の位置が、固有の重みがあった、
そして、それに固有の沈黙まで。世界は軽やかだった。本当に軽やかだった…」
(ジャン・ジュネ著/鵜飼哲訳「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」現代企画室)